2021/08/13
ウェルスナビCEOの柴山和久さんの新刊を読みました。
本屋さんで立ち読みしたところ、「なぜ積立投資を途中でやめてしまう人が多いのか」という日頃の疑問がクリアに説明してあり、目から鱗な気分になりました。早速読んだのでレビューしたいと思います。
本書は、「長期・積立・分散」という投資の基本がきちんと書かれていることはもちろんのこと、多様なキャリアを持つ柴山さん自身のエピソードも反映されています。
良質な投資本であるとともに、「読みもの」としても楽しめる一冊になっています。
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著者の柴山和久さんとは
著者の柴山和久さんは、東京大学、ハーバード・ロースクール、財務省、インシード、マッキンゼーと渡り歩いてウェルスナビを起業した方です。ニューヨーク州の弁護士資格もお持ちです。
このように圧倒的な経歴の持ち主ですので、普通の人がしていないような経験をしています。さまざまなエピソードが楽しめるのも、そういった経験の積み重ねがあるからです。
現在はロボアドバイザーのウェルスナビのCEOとして活躍しています。
一貫して「お金の仕事」に携わって経験したことや考えたことが本書のなかに反映されています。
本書の特徴
本書の特徴は、次のような点にあると思います。
その1は、海外のスタンダードな資産運用という切り口で投資法を紹介しているところです。
海外の富裕層や機関投資家にとってスタンダードな資産運用は、「長期・積立・分散」です。
本書は、なぜ日本では投資の王道である資産運用の手法が根づいていないのか、なぜ資産運用をすべきなのか、どのように資産運用を実践すればよいのかを解き明かしてくれています。
アメリカ人の奥様のご両親のエピソードが印象的です。そのおかげで、アメリカの一般家庭の資産運用がリアルにイメージできます。
その2は、投資でしてしまう失敗を自分の体験としてまとめているところです。
第1章は、投資での失敗の「あるある」のオンパレードです。
2018年は相場が久しぶりに変動している状況です。個別株などで動揺している方もいるかもしれません。なぜ投資で失敗をしてしまうのかが、著者自身の体験としてまとめてあります。
そして、私が一番印象に残ったのが、「なぜ積立投資を途中でやめてしまう人が多いのか」という記述です。
積立投資を初期の段階でやめてしまう人が多い理由が2つの段階であるといいます(135頁以下)。その原因は「心の罠」です。この説明を読んで、心から「なるほど」と思いました。
私はなんとか6年以上続けていますが、途中で「投資信託を売ってしまおうかな…。」なんていう気分になったのも事実です。多くの人が長期投資を続けられないのは、こういう理由があるのかと納得しました。
この部分は、積立投資をはじめたばかりの人は特に必読だと思います。ここで「ネタバレ」はしませんので、興味を持った方はぜひ読んでみてください。
その3は、お金から自由になるために実践すべきことを記述してあるところです。
お金から自由になるために実践すべきことは、必ずしも「長期の資産運用」ではないのです。この点も納得するところでした。特に若い方に読んでほしい内容になっています。
若い方は、投資よりも考えるべきことがあります。
ちなみに、コラムも楽しめました。「七面鳥の罠」という哲学をふまえたエピソードがありますが、これはかなり刺さりました。投資でもよくある場面のエピソードです。
投資の思考法と具体的な手法をわかりやすく伝えてくれる1冊になっています。
「これからの投資の思考法」を示す良書
本書のメッセージは、基本的に「人間の脳は資産運用に向いていない」というところにあります。
私も積立投資をはじめて「感情に流されない」ことが最も重要だと思うようになりました。
投資の手法自体はシンプルなのですが、長期で続けるためには、自分自身で「感情に流されない思考法」を身につけることが必要になります。
長期投資が続いているブロガーの多くは、この「感情に流されない思考法」を身につけています。
それが、頭では理解していても、実践するのがまた難しいのです。「人間の脳は資産運用に向いていない」のだなと、私も最近思うようになりました。本書にうまく「言語化」してもらえた気がしました。
柴山さんがロボアドバイザーのウェルスナビで何がやりたいのか、この本を読んでよくわかりました。今後も不安定な相場が予想されます。ウェルスナビの実力は、これからが試される場面かもしれませんね。
わかりやすい記述のなかに、たくさんの知恵が含まれている一冊です。
「最近の下落相場でどうしたらいいだろう…」なんていう人こそ、読んでほしい投資の思考法が書かれています。