2021/08/13
『ウォール街のランダム・ウォーカー〔第12版〕』が2019年7月20日に発売されました。
書店で平積みになっていたので、早速購入しました。最新の動向やデータをふまえて、バートン・マルキール教授が情熱をもって語ってくれています。
普遍的価値がある「インデックス投資のバイブル」の最新版です。
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ウォール街のランダム・ウォーカーとは
『ウォール街のランダム・ウォーカー』は、1973年に発売以来、全米累計150万部を超える「投資の名著」です。
インデックス投資について学んでいくと、必ずたどりつく一冊ですね。
すでに読んだという方も多いと思います。
アメリカでは第12版が2019年1月に発売されています。
私は、第10版のときに初めて読んで、第11版も購入しました。何度も繰り返して読んで楽しんでいる一冊です。
本書では、1973年の初版から変わらないメッセージが貫かれています。
それは、本の最初の1頁にある一文に集約されています。
個人投資家にとっては、個々の株式を売買したり、プロのファンドマネージャーが運用する投資信託に投資するよりも、ただインデックス・ファンドを買ってじっと待っているほうが、はるかによい結果を生む
ただインデックス・ファンドを買ってじっと待っているほうが、はるかによい結果を生む。
本当なのかと疑う人も多いかもしれませんが、多くの支持者がいるのが本書の主張の正当性を裏付けていると思います。
原著第12版で何が変わるのか
すでに何度も読んでいる私としては、新たな内容はそう多くないと思うのですが、原著第12版で何が変わるのかが気になるところです。
第11版の翻訳が2016年3月でしたので、約3年ぶりの改訂になります。今回の装丁はグレーの基調になっています。
日本経済新聞社のサイトに、本書のおすすめのポイントが記載されています。
おすすめのポイント
◆全世界で読まれている「投資のバイブル」
1973年の初版以来、全米累計150万部を超え、「投資の名著」として絶賛されるベスト&ロングセラー、A Random Walk Down Wall Streetの最新版。本書の主張は「インデックスファンドへの投資がベスト」というシンプルなものだが、類書と異なる点は、なぜ他の投資方法がインデックス投資に比べて劣っているのかを、データを示してしっかり論じているところだ。過去のデータを鑑み、アクティブファンドの長期リターンが市場平均を下回ることを証明し、「猿がダーツで選んだポートフォリオを運用するのと等しい」とこき下ろすあたりは、読んでいて痛快かつ明快である。
硬派な内容でありながら、数式はほとんどなく、グラフや表を多用しており、初心者にも理解しやすくなっている。間抜けなテクニカル分析手法やチューリップからITに至るバブルの話など、読み物としても面白く読める。
◆改訂のポイント
本改訂では、第4章の「21世紀の歴史」に仮想通貨の話題を3項ほど追加したほか(仮想通貨はとんでもないバブル、実体のないいい加減なものと言い放っているが)、前回の改訂で追加した「第11章「スマート・ベータ」は本当に役立つか」の章をさらに拡充。
スマート・ベータとは、時価総額(TOPIX)や株価(日経平均)のような”単純”な要素にウエイトを置くのではなく、「財務指標」や「株価の変動率」、「配当」など、より”スマート(賢い)”な要素にウエイトを置く考えのことで、日本でもETFや投資信託の拡充で関心が高まっている。本書ではより「リスクパリティ」(それぞれ保有する商品のリスクが均等になる考え)である投資手法を解説のメインに据えている。
https://www.nikkeibook.com/item-detail/35823
この記載からわかる改訂のポイントは、仮想通貨の話題が追加されているということと、第11章「スマート・ベータ」は本当に役立つか」の章がさらに拡充されているということです。
気になるのは、「リスクパリティ」の最新の手法も解説されているというところですね。
「リスクパリティ」というのは、それぞれ保有する商品のリスクが均等になる投資法ですが、それをバートン・マルキール教授がどのように評価しているのか、興味があるところです。
第12版の変更点
すでに読んだことがあるという人も、個人投資家のなかには多いと思います。既存の読者にとっては、第12版の新しい部分がどのような内容なのかが気になるところだと思います。
第12版の主要な変更点は次の3点です。
第1は、第1部第4章の最後に追加された「仮想通貨バブル」に関する記述です。
第1部第4章は、21世紀のバブルについて語られていますが、そのバブルの一例に仮想通貨が追加されました。ここ数年の仮想通貨の熱狂はみなさんもご存じのとおりです。今も仮想通貨に興味があるという人もいるかもしれません。
第2は、第3部第11章の「『スマート・ベータ』と『リスク・パリティー』」のパートです。
第11版でスマート・ベータの記述が加わりましたが、第12版では、リスク・パリティーの記述が加わっています。特に、ヘッジファンドのブリッジ・ウォーター社のレイ・ダリオの投資戦略について頁が多く割かれています。
第3は、「エピローグ」が追加されてたところです。第11版ではエピローグがなかったのですが、バートン・マルキール教授が自ら「エピローグ」として、インデックス運用に対する批判的意見に応答しています。
変更の中心は「『スマート・ベータ』と『リスク・パリティー』」の部分でしょう。新たな投資戦略の動向について新たな知見が含まれています。
この他にも、図表のデータも最新版となっていますし、細かい記述の補筆・修正もなされています。第11版を横に読み比べてみましたが、細かいところが変わっていて、変更点を眺めているだけでも楽しめました。
ポートフォリオの中心はインデックス運用にせよ
今回の第12版の新たに追加された部分を中心に読みました。新鮮に感じたのは次の点です。
その1 は、仮想通貨についてはっきりとダメ出しをしている点です。日本でもビットコインなどの仮想通貨が投資対象として好まれています。しかし、仮想通貨の値動きはみなさんご存じのとおりです。
バートン・マルキール教授は、仮想通貨について、価格上昇の割合と短期間の価格変動幅の大きさの両方において、オランダのチューリップバブルをも凌駕する史上最大のバブルだと断じています。仮想通貨の位置づけをはっきり指摘してくれています。笑ってしまうくらいの徹底的なダメだしで、すっきりと楽しめました。
その2は、スマート・ベータとリスク・パリティーについて詳しい解説がなされている点です。とりわけ、レイ・ダリオ率いるブリッジ・ウォーター社の「オール・ウェザー(全天候型)ファンド」について詳しく分析がされているのが興味深かったです。
リスク・パリティー戦略については、全面的に否定というわけではなさそうです。
その3は、これまでなかったエピローグです。わずか5頁のエピローグですが、これまでのインデックスファンドを批判する声に対して、改めて意見を述べています。
今回新たに追加されたこのエピローグには、バートン・マルキール教授の特別な思いが感じられました。
87歳を迎えてなお投資家啓蒙に情熱を注ぐバートン・マルキール教授のメッセージが感じられるエピローグになっています。
変わらない部分に価値がある
訳者あとがきで井手正介さんが指摘しているように、第12版で新たに加わった新しいテーマよりも、本書の価値は、マルキール教授が、初版以来一貫して主張してきた変わらない部分にあるような気がします。
本書全体に貫かれるメッセージはこれです。
ポートフォリオの中心部分をインデックス運用にせよ
なぜそうなのか、本書のなかでさまざまな角度から検証してくれています。
帯にも紹介されているまえがきの部分にも、45年にわたって変わらないメッセージが書かれています。
本書を世に出してから、45年以上の歳月が流れた。初版の中で私が発したメッセージは、「個人投資家にとっては、個々の株式を売買したり、プロのファンド・マネージャーが運用する投資信託に投資するよりも、ただインデックス・ファンドを買ってじっと待っているほうが、遙かによい結果を生む」という単純明快なものだった。(中略)今、私はこの考え方に一層確信を持つようになった。というのも、それが今では実際の運用結果によって裏打ちされているからである。(中略)本書が個人投資家向けのわかりやすい投資ガイドであることは、いささかも変わらない。 (まえがきより)
第12版においても、これまでの重要な主張は変わらずに維持されています。改めて読んで、インデックス・ファンドを中心に長期で運用することの重要性を再認識できました。
まだ読んだことがないという方は、特に後半部分に注目するといいでしょう。第4部の「ウォール街の歩き方の手引」のパートは、インデックスファンドを使った長期投資のコツが網羅されています。
投資は、理論的な裏づけがわかれば、勇気をもって運用を続けることができます。普遍的価値のある「インデックス投資のバイブル」です。書店にあれば、手に取ってみるといいと思います。kindle版も発売となっています。
しばらく手にとっていなかったので、忘れていた部分もあって改めて楽しめました。
書棚に入れておいて、自分の投資方針に迷ったときに、また改めて読み返したいと思います。