2021/08/13

今日の日経新聞にGPIFの運用損失に関する国会論戦の様子が紹介されていました。
このニュースを聞く度に、少し残念な気持ちになります。
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蓮舫代表vs安倍首相
9月28日の国会では、蓮舫代表vs安倍首相で次のようなやりとりがあったといいます。
蓮舫代表は、GPIFのリスク運用を批判し、安倍首相は「短期的な評価で国民の不安をあおることは慎むべきだ」と反論したといいます。
9月28日の国会論戦。民進党の蓮舫代表は「リスクが低く市場をゆがめない運用に戻すべきだ」と安倍晋三首相に迫った。株の投資収益は長い目で見ると債券より大きいが短期的には価格の振れが大きい。当初は大幅な利益を生んだが、世界経済が減速すると逆に損失が膨らみ、16年上半期の運用損失は10兆円となった。それでも首相は「短期的な評価で国民の不安をあおることは慎むべきだ」と語気を強めた。
蓮舫代表、どんな演説をしたのでしょうか。
検索してみたら、演説の原稿が公表されていました。該当部分を紹介したいと思います。
私からは最優先で手をつけるものは年金積立金の運用改善だと提案をします。
2014年10月に安倍内閣は年金積立金GPIFの株式運用比率を倍増させました。その影響で、昨年度から本年6月までの15 ヶ月で10兆円もの運用損が出ています。この事実が国民に与える影響、不安は小さくありません。
さらに問題なのがGPIFと日銀が巨額な公的資金を市場に投じ、市場を歪めている点です。GPIF は 2015 年 3 月時点で国内株の2000 銘柄以上を保有、2016年3月時点の時価総額は30.5兆円に達し、今や日銀のETF 購入と合わせ上場企業の4 社に1 社の筆頭株主が公的マネーと報じられます。株価が下がっても売るに売れず、結果的に損失が拡大する懸念もぬぐえません。
国民の不安を煽るかのような年金積立金の運用は止め、リスクが低く市場を歪めない運用に戻すべきと提案しますが、総理、この提案を採用するお考えはあるでしょうか。
蓮舫代表は2つの理由でGPIFの運用を批判しています。運用損がでている点とGPIFと日銀が市場を歪めている点です。
後者については、たしかに副作用もあるかと思います。
興味深いのは前者です。運用損が出ていることは、国民に不安をあたえるといいます。
短期的な運用損は年金支給額に影響しない
この記事がまだ良心的なのは、年金の仕組みを紹介している点です。
積立金からは給付していないため、短期的には運用損失が発生しても年金額は減らないと紹介しています。
現役世代が毎月納めている保険料はGPIFに積み立てられず、そっくり高齢者への給付に回される。足りない分は税金で賄う。さらに足りない分は、09年度から積立金を取り崩して確保している。積立金から得ている給付財源は1割にすぎない。首相の強弁の裏には、短期的に運用損失が発生しても年金額は減らないという実態がある。
長期金利はマイナス。年金制度を維持するために必要な1・7%の利回りを国債だけで達成することは不可能に近い。
短期的な運用損は年金支給額に影響しない形で運用されています。GPIFは当面使わないお金で運用しているというわけです。
これは、インデックスファンドで投資をする個人投資家と同じ考え方です。
知られていないインデックス投資の基本
GPIFの運用の特徴は、資産全体の8割を、株価指数などへの連動を目指す低コストのインデックス型で運用しているところにあります。
いわば、国民全員が年金を通じてインデックス投資をしていることになります。
投資の運用損が不安だと思う人がいることは否定しません。年金の運用の是非についてもいろいろな見解もありうると思います。
ただ、この手のニュース記事を読む度に思うことがあります。
多くの人がインデックス投資の基本を知らないのだなということです。
インデックス投資を知っている人と知らない人では、今日のニュースも意味が違って聞こえるのかもしれません。
インデックス投資の基本を理解すると、一時期の損得だけで運用の良し悪しを議論するのはナンセンスだということがわかります。
GPIFの年金運用は、3期ぶりに運用益がでているそうですし、GPIFの低コスト運用のことや長期投資の考え方などが新聞で紹介されれば、GPIFの運用についても見方が変わってくると思います。新聞報道にも工夫があってもいいと思います。
なお、以前に日経新聞で田村正之さんがGPIFの運用について個人の投資に引きつけて解説してくれています。インデックス投資の基本とGPIFの運用に興味がある方はぜひ読んでみてください。
GPIFの運用損が不安だと思う人は投資をしないほうがいい
投資は自己責任です。GPIFの運用損が少しでも不安だと思う人は、自分のお金も少額でも投資をしないほうが賢明だと思います。
不安な日々を過ごすのはよくありません。お金を増やすことよりも、日々安心して眠れることが大切です。
金融庁が言うとおり、日本全体でお金の教育が必要なのかもしれません。
お金の知識がもう少し世の中に浸透するといいですね。