2021/08/13
勝間和代さんの『お金は銀行に預けるな~金融リテラシーの基本と実践~ 光文社新書』は、言わずと知れた2007年のベストセラーです。私の書棚にも入っていて、投資の必要性を知るきっかけとなった本です。
amazonで本を検索していたら本書のレビューが目にとまりました。211件のレビューで☆の評価は平均で3.7、5の評価から1の評価までまんべんなく分かれています。批判があるのは人気の証拠です。
レビューを読むと積立投資で何が大切かを考えるきっかけになるような意見が多くありました。今さらですが本書をとりあげたいと思います。
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本書の内容
本書の要点は、以下のようなものです。
- 投資は5%のリターンでも十分
- 住宅ローンは組まない、車は買わない、生命保険は定期低減型にする
- 分散投資でインデックスファンド、ETFなどへの投資する
- 一般投資家は、デイトレに走らず、長期投資を心がける
- 定期的にチェックしてリバランスする
- ドルコスト平均法で投資を行う
本書の主張は、「毎月、積立型の投資信託を始めなさい。特に手数料の安いインデックスファンドで、日本株、日本の債券、海外の株式、債券4分の1ずつ分散投資しなさい」というものです。
過激なタイトルから想像する内容とは違って、低コストの投資信託で資産形成を目指すという、典型的なインデックス投資を指南する1冊といえます。
本書に対する厳しいレビュー
この本は、2007年に出版され、2008年の金融危機の直前でした。金融危機を経験したインデックス投資本ということになります。
勝間和代さんの人気のせいかもしれませんが、☆1つのレビューにはかなりの批判が集中しています。一部を紹介します。
未曾有の金融危機により多くの被害をもたらした犯罪的書物
2008年10月の「暗黒の一週間」で、株価は大暴落。他の金融商品による投資でも多くが膨大な損害をもたらしている。この本が地獄への案内書となって、うっかり株などに手を出してしまいとんでもない被害を受けた方も多いのではなかろうか。
破産への手引き書
部分部分で言っている投資のテクニックについてはそのとおりかもしれませんが、今となっては、リスクはコントロールできるので、筆者の薦めに従い、少しでも早く投資すれば危険はなく安心して生活することができるようになるという主張そのものに大きな問題があるのだと思います。
鵜呑みにすると危険
この百年に一度といわれる金融危機の真っ只中で、まったく先を読まずに機械的分散投資をすることが危険ではないのか。
しかし、こうした意見に対しては、積立投資の基本を理解した方からのレビューが再批判を行っています。こうしたやりとりがあるのもこの本のレビューの特徴です。
「この本を読んで投信買ったらサブプライムで大損だ!」という批判がありますが、それはこの本で勧められている「毎月積み立てながら分散投資で長期運用」の原則を守っていない買い方をしたのではないでしょうか。
それ以外にも参考になるレビューがたくさんある
☆3から☆4つの人もさまざまな観点で意見を述べています。参考になったレビューを一部紹介します。
それこそ断る力
・銀行にお金を預けること自体が機会損失であり、
・そのために分散投資をしなくてはならない、
・それには投資信託を利用することです、
・ただ、ただで飯は食べることはできないので、
・それはご自身の責任で判断してください
というのは、正論なようで、素人には機会損失なのかと、申し訳ない気持ちにさせられ、かつ、わかりにくい、投資信託をしなくてはならないけど、怖いと思うこと自体を、この本は否定していて、逃げ道のない息苦しさを感じました。
内容は間違ってません。ただし。。。
本書の一番大きな問題は、リスクに関する記載が不十分であるということです。日本株式・海外株式・日本債券・海外債券に1/4ずつ投資するという考え方は、独身の若者にとっては大きな問題を招かないでしょう。
が、リスクを大きく取ることができない年代の方(もしくは長期投資を行うことが困難な方)にとっては危険を伴います。昨今の不安定な経済情勢下、上記アセットアロケーションでは、多くの方が、(一時的であったとしても)重大な損を出したと予想されます。例えば、本書の内容に従って投資を行った年金生活者の資産価値が大きく下落してしまったとすれば、それは悲劇です。リスクを取りたくても取れない人にとっては、銀行預金も十分ありえる一つの選択肢です。
レビューから学べること
この本は、インデックス投資の基本をわかりやすく伝えていて、これから投資を考えている人にも参考になります。住宅ローン、車、生命保険にお金を使わないことの重要性についても言及していて、2007年出版と古くなりましたが、今読んでも古く感じさせない内容になっています。
勝間和代さんの人気のせいかもしれませんが、批判も多く集めている本でもあります。『お金は銀行に預けるな』という過激なタイトルや、どんな人にも一律のアセットアロケーションを勧めたり、アクティブ型投信やFXへのステップアップも提案しているせいでしょうか。
『お金は銀行に預けるな』というタイトルを信じて、ほとんどの資産を投資にまわしたり、自分の想定よりリスクをとりすぎてしまう人もいたのかもしれません。
amazonの本書のレビューは、投資で何が大切かを考えるきっかけになります。レビューを読んで、投資のリスクを伝えることは思った以上に難しいということも感じました。
逆にいうと、こんな本があったらいいなと思います。
- 金融危機のときでも積立投資を続ける方法を教えてくれる本
- 損をするのが怖いという感情をコントロールする方法を教えてくれる本
- そもそも投資が合わない人がいて、そういう人は無理に投資をしなくてもいいということを教えてくれる本
- リスクは人によってそれぞれであり、リスク許容度に応じた対応を教えてくれる本
賛否両論あるという意味では、今読み返してもさまざまなことを考えさせてくれる本です。