2021/08/13
多くの個人投資家は、長期投資から得られるリターンを期待して投資信託で資産形成をはじめると思います。
ところが、せっかく長期で保有するつもりだった投資信託を、多くの人が損をしてしまう残念な売り方をしてしまいます。なぜそうなってしまうのか、その原因を「ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉 ―株式投資の不滅の真理」の著者であるバートン・マルキール教授が明快に分析してくれています。
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投資家の誤りとは
バートン・マルキール教授は、多くの個人投資家は株式投資のタイミングを誤っているといいます。株価が上がっている楽観的なときに投資をして、株価が下がっている悲観的なときに投資をしないのは間違いだというのです。
バンガードのインタビューにおいて、ある女性に投資のアドバイスをしたエピソードを披露しています。
彼女はまだ50代前半で、35年以上の平均余命がありますので、ポートフォリオに株式の割合が多くても大丈夫でした。しかし彼女は非常に神経質だったため、私が適切だと思う以上に債券をかなり多めに、逆に株式の割合をかなり少なめにしました2002年10月のある日、なんと彼女は泣きながら私のところにやって来て、「持っていた株が下落したのですべて売りたい」と言ったのです。
株価が下がっているときに「すべて売りたい」と相談してきたといいます。
じつはこれこそ人々が犯してしまう誤りのひとつだというのです。
なぜ多くの投資家は株式の長期投資から得られるリターンを得ることができないのでしょうか?それは、彼らが間違ったタイミングで間違ったファンドを買ってしまうからです。皆が楽観的な時にだけ資金をつぎ込み、周囲が悲観的になったときに資金を引き上げようとするからです。
感情で動くと損をする
(引用)Burton Malkiel, Investors’ Most Serious Mistake
アメリカの統計でもその傾向は明らかです。
上のグラフ赤いラインは、アメリカのインデックス指数のS&P500の推移です。青い部分は資金流入の流れになります。
これをみると、株価が上がっている楽観的なときに資金をつぎ込み、株価が下がっている悲観的なときに資金を引き上げるという傾向がはっきりとわかります。
これは日本の投資家も同じかもしれません。日本の投資家も楽観的な時にだけ資金をつぎ込み、周囲が悲観的になったときに資金を引き上げようしてしまう傾向があるように思います。
投資の敵は自分自身の感情
投資信託で資産運用をする人は、下落相場で不安になって投資信託を売ってしまうのは賢明ではありません。下落相場で積立投資をやめてしまったり、金額を少なくすることもリターンにつながりません。
高いときに買って安いときに売れば、損になるのは当然のことです。
ですが、頭では理解していても実践するのが難しいのがこの部分なのです。
投資家の敵は自分自身の感情です。感情のおもむくままに投資をしていたら、損をしてしまうのは行動経済学で明らかになっています。
積立投資がうまくいくためのポイントは、資本主義経済は長い目でみれば発展していくと信じて、下落相場でも積立投資を冷静に続けていくことです。
頭では理解していても、これを実践するのはじつはかんたんなことではありません。投資家の敵は自分自身の感情であることを理解することが、積立投資でうまくいくための重要な出発点だと思います。
相場が普通のときに、よく理解しておきたいですね。
以上、なぜ多くの個人投資家は残念な売り方をしてしまうのか…という話題でした。
参考リンク:
自分の感情をコントロールすることが投資では大事になります。行動経済学の知見は参考になります。
バートン・マルキール教授の「ウォール街のランダム・ウォーカー」は、積立投資をするなら読んでおきたい名著です。納得できているかどうかで、未来の自分の資産は大きく変わってきます。