2021/08/13

今日の日経新聞の朝刊1面は、投資信託の話題でした。
「投信、長期にシフト 人生100年時代を下支え」という記事です。
日経新聞の朝刊1面で「投信、長期にシフト」とあるので、「いよいよそういう時代がきたか!」と思って期待して読みましたが、読んでみたら思っていた内容と違ってびっくりしたのでした。
この記事は、あえてミスリードをさせているところもあって、言いたくはありませんが要注意な記事です。
「投信、長期にシフト」という記事で、どういう内容なのか。せっかくなので取り上げてみたいと思います。
sponsored link
目次をタップすると見出しにとびます [非表示]
「投信、長期にシフト」の「長期」の意味
「投信、長期にシフト」という見出しをみて、「長期」をみなさんはどのような意味だと思うでしょうか。
「長期」といえば、投資信託を長期で「保有」するようになった、という意味で長期投資を想像する人も多いと思います。
ですが、この記事では「長期」の意味が違うのです。
書き出しの一文には、「日本の投資信託の主役が運用歴の長い商品に移ってきた」とあります。つまり、金融機関は運用歴の長い投資信託の販売に力を入れているというのです。
その例として紹介されている商品が、アセットマネジメントOneの「MHAM新興成長株オープン」です。
2000年に設定された商品だそうで、運用歴がたしかに「長期」ですね。
こうした商品が「長期で運用成績の安定した投信」だということで、金融機関が販売に力を入れているという記事内容でした。
この記事で使われている「長期」の意味は、投資信託を長く保有するという意味の「長期」ではなく、投資信託の運用歴が長いという意味の「長期」だったのでした。
アセットマネジメントOneの「MHAM新興成長株オープン」とは
問題は、運用歴が長い投資信託がいい商品なのかということになります。
そこで、記事に紹介してあったアセットマネジメントOneの「MHAM新興成長株オープン」を確認してみました。私ははじめて知った投資信託です。
日本の上場株式のうち、高成長が期待できる「新興企業」の株式を中心に投資し、NASDAQなど主要先進国の新興企業向け市場の株式を中心に、外貨建資産への投資を行うことがあるという方針だそうです。
2000年2月25日設定です。下が設定来のチャートになります。
ずっと純資産が増えていませんでしたが、たしかに、2018年頃から急に資産が伸びています。金融機関が販売に力を入れたのだと思います。分配金もだす投資信託です。
信託報酬などの手数料は新聞記事には掲載されていませんので、ホームページで調べてみました。
手数料は下のとおりです。
- 購入時手数料 購入価格に3.24%(税抜3.0%)を上限
- 信託報酬 年率1.836%(税抜1.7%)
購入時手数料もかかりますし、信託報酬は最近の低コストのインデックスファンドの10倍以上の水準です。
もちろん、「つみたてNISA」の対象ファンドではありません。
手数料の面からも、運用成績の面からも、おすすめできるファンドではないと私は思います。
「長期で運用成績の安定した投信」という売り言葉に注意
今、金融機関は「長期で運用成績の安定した投信」であるという売り文句で、こうした商品を販売しているということなのですね。
ファンドを調べてみて、この記事の意味が理解できました。
この記事が誠実ではないなと思うのは、「長期」という言葉を記事の中に巧みに混在させているところです。
記事には、この商品を取り扱う金融機関のコメントとして、「長い目で顧客が利益を得られ、投資の成功体験を積み重ねてもらうことを重視している」と紹介していますが、ここでの「長い目で」の意味は長期で保有するという「長期投資」の意味にすり替わっています。
そして、記事の最後には「積み立て投資」をする人が増えているとして、ここでも「長期投資」の意味で「長期マネーを呼び込む」と言う言葉を使っています。
こうした高コストのファンドでは、長期の資産形成ではかなり不利になるのは、新聞社の方が知らないはずがないと思うのです。
こうした記事で「長期」という言葉で投資信託選びで間違う人が増えないといいなと思います。
金融機関と新聞社の関係、思った以上に問題の根は深そうですね。
以上、「投資信託、長期で」という金融機関の売り言葉に要注意…という話題でした。
参考リンク:
信託報酬というのは、「手数料」のことです。手数料が高い商品では、なかなか資産は増えてくれません。
手数料の違いは大きく影響します。金融機関に手数料を払っているうちは資産はなかなか増えません。知っておきたいポイントです。
投資をはじめるなら「つみたてNISA」を利用しましょう。地雷商品が取り除かれています。証券会社も低コストの商品を扱っているところを利用しましょう。