2021/08/13
投資信託の実質コストの計算方法を知っているでしょうか。
投資信託には信託報酬のほかにも手数料がかかります。全体を合計した手数料が実質コストとよばれています。
初心者向けの本などではあまり紹介されておらず、少し難しいのでこのブログでもあまり取り上げていない話題ですが、せっかくなのでまとめてみたいと思います。
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投資信託の実質コストとは
投資信託には、信託報酬や信託財産留保額のほかに「その他費用」がかかっています。
それを確認するには投資信託の運用報告書をみるしかありません。
運用報告書には、1万口あたりの費用として、信託報酬の他に、その他費用として売買委託手数料、有価証券取引税、保管費用等が記載されています。
つまり、信託報酬に表示されている手数料はすべての手数料を表示しているわけではないということですね。
信託報酬に、その他の手数料を足したものが本当の手数料(実質コスト)です。信託報酬が低い投資信託だと思っていても、実質コストが高ければ結局は高い手数料をとられていることになります。
では、実際に投資信託の実質コストを確認してみましょう。投資信託の実質コストを把握するためには、自分で計算しなければならないケースもあります。
投資信託の実質コストが低い良い例と、実質コストが高い悪い例を示すことで、どうやって確認すればいいかをご紹介したいと思います。
実質コストが低い優良ファンド
最初に実質コストが低い良い例をみてみましょう。
たわらノーロード先進国株式の実質コスト
実質コストが低い良い例の1つが、「たわらノーロード先進国株式」です。
- たわらノーロード先進国株式/アセットマネジメントOne
運用報告書(全体版)の5ページに「1万口あたりの費用明細」があります。信託報酬が0.199%、その他費用の合計が0.03%で費用の合計は0.229%です。
ただ、注意が必要なのは、この運用報告書の費用は、2015年12月18日から2016年10月12日の約10ヶ月間の費用だということです。ですので、1年分の費用に再計算する必要があります。
たわら男爵さんがクリアに計算方法を示してくれています。
たわら先進国株の信託報酬は税込0.243%ですから、これは運用報告書の0.199%の1.22110552763倍です。したがって、運用報告書の実質コスト0.229%にこの数字を掛けると1年の実質コストになるはずです。
たわら先進国株の実質コスト(信託報酬を含む総額) 0.2796%(税込)
信託報酬を除くコスト 0.0366%(税込)
これでわかりますね。
「たわらノーロード先進国株式」は、信託報酬0.2430%、実質コスト0.2796%ということになります。
隠れたコストが少なければ、実質的に手数料が低くてすみます。
先進国株式クラスでは、現時点で「たわらノーロード先進国株式」が最安のインデックスファンドです。
世界経済インデックスファンドの実質コスト
もうひとつ良い例として「世界経済インデックスファンド」を紹介したいと思います。
2017年1月20日の第8期は、信託報酬0.540%、実質コスト0.631%でした。1年間の費用なので再計算する必要はありません。
今や信託報酬が0.2%台のバランス型投資信託もありますが、世界のGDP比率で投資できる数少ないバランス型投資信託として「世界経済インデックスファンド」には今も価値があります。
良いと思うのは、年々実質コストが下がっていることです。
過去の運用報告書を確認すればわかります。
- 2015年の第6期の実質コスト 0.703%
- 2016年の第7期の実質コスト 0.637%
- 2017年の第8期の実質コスト 0.631%
順調に実質コストが下がっていますね。
最近も資産が急激に増えていますので、より低い実質コストになることが期待できます。
実質コストが高い残念なファンド
実質コストが高い悪い例というものがあります。ひとつみてみましょう。
iFree新興国株式インデックスの実質コスト
残念ながら悪い例となってしまったのは、「iFree新興国株式インデックス」です。
8月25日にはじめて運用報告書が公表されて実質コストが判明しました。じゅん@さんが速報でまとめてくれています。
これも2016年9月から2017年7月までの約10ヵ月間ですので、1年間に再計算する必要があります。
じゅん@さんの計算によると次のとおりです。
- 信託報酬:0.303%
- 売買委託手数料:0.190%
- 有価証券取引税:0.061%
- その他費用:0.550%
- (うち保管費用):0.469%
- 実質コスト:1.104%(年率1.338%)
信託報酬は0.3672%(税込)で低コストであることが期待されていましたが、実質コストは1.338%と高コストになりました。
一番の原因は保管費用です。
残念ながら悪い例になってしまっています。原因はよくわかりませんが、指数として「FTSE RAFIエマージングインデックス」を採用していることが関係しているのかもしれません。
投資信託の実質コストを比較する方法
投資信託は5000本以上あり、実質コストも毎年更新されます。すべての投資信託をとりまとめるのは膨大になります。
投資信託の実質コストを比較するには、気になるファンドのホームページで運用報告書を確認するのが結局は一番早い方法です。
ファンドの設定から1年が経過すると「運用報告書」が掲載されています。
そのファイルをクリックして、「1万口あたりの費用の明細」の欄を確認すればいいのです。
確認すべき点は下記の点です。
- 対象期間が1年になっているか
- 名目上の信託報酬がいくらか
- その他の費用がどれくらいかかっているか
対象期間が1年になっていないファンドも多いです。その場合は1年に計算し直さないと他のファンドと比較できません。
インデックスファンドの代表的な商品については、こちらのリンク先でまとめています。気になった商品の実質コストは、各ファンドのホームページで確認するといいと思います。
新規設定の投資信託は慎重に
このように、投資信託には信託報酬のほかに、隠れたコストがあることを理解していただけたかと思います。
新規設定の投資信託が登場したときには、運用報告書がありませんので実質コストが判明していません。ですので、新規設定の投資信託を選ぶときには、ある程度の慎重さが必要になります。
投資をはじめて慣れてきたら、運用報告書の情報から実質コストを把握できるようになりたいですね。
以上、投資信託の実質コストをチェック!良い例と悪い例…という話題でした。
参考リンク:
投資をするならコストを抑えることが大事です。コストは確実に発生しますので、最低限のコストで運用したいところです。
コストが大事だからといって、次々に乗り換えたほうがいいかは慎重な判断があってもいいと思います。自分のペースで投資信託を選んでいきたいですね。